>>>  征野千里  <<<

       〔復刻版〕 『 征野千里 』
             一兵士の手記

             中野部隊上等兵
                  谷口勝 著

 発行日    2022年6月30日 第8版発行
 発行所   : ダイレクト出版株式会社
 編集協力:株式会社ぷれす
  ¥1,078

「残虐」とされた日本兵たちの素顔 南京で戦った兵士が
見た戦場のリアル

GHQが消し去った “生の声”が現代に蘇る

「飾りも何もないところが尊い。ヤマも何もないようなところに、
何度も何度も読み返したいところがある。(中略)
支那事変が生んだ作品は幾多ある。しかし、この書の中に
盛られているものは、その1つ1つが何の装飾もない、
『ホントウノ戦争』の姿である」
       ――― 本書「序」(陸軍少将 桜井忠温)より

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※ 本書は、谷口勝著『征野千里』(昭和13年12月2日
三刷 新潮社刊)を底本としている。本書では読みやすさの
観点から、原書の標記を尊重しつつ、可能な限次のように
標記を改めた。
(1)歴史的仮名遣いを現代仮名遣いに改める。
(2)「常用漢字表」に掲げられている漢字は、原則として
   新字体に改める。
(3)難読と思われる表記には、振り仮名をつける。
(4)原書の誤植は修正する。また、必要に応じて注記を
   加える。


 GHQが抹消した
 “一兵士の手記”
  『南京攻略の最前線
      ……彼は現地で何を見たのか?』


 「これは貴重な本である。古本屋でも入手困難な本だった」南京事件研究の専門家がそのように語る、GHQの焚書書籍 『征野千里』。
幸いにもGHQの没収を免れた本が わずかながら残っており、およそ80年ぶりに復刻。

 「日本軍は南京で約30万人の中国人を虐殺した」いわゆる「南京大虐殺」は教科書にも載る事件で…中国では南京大虐殺紀念館が建てられるなど、この事件によって、日本軍の残忍さが世界に印象づけられました。
短期間に30万人もの人を虐殺できるのか?その割に明確な証拠があまり見つからない…など、最近では、事件に対する疑問の声もあがっていますが…

 この事件があったとされるちょうどその場に、南京攻略戦に『征野千里』の著者である 谷口勝(歩兵上等兵)は従軍していました。
そして、南京城占領の任務を終え、次なる都市の「蕪湖」(ぶこ)を訪れた谷口氏は、不思議な光景を目にします…

 南京で本当は何が起こっていたのか… その “ありのままの体験” を描いたのが戦後GHQによって消し去られた『征野千里』です。

 著者の谷口勝は、階級の高い軍人でも、著名な政治家や思想家でもない普通の兵士。
そのような人物の手記を なぜGHQは禁書にしたのでしょうか?

 いったい、この本の何をGHQは恐れたのでしょうか?


=== 序 ===


 日露戦争後、ある兵士が作った戦争記録を読んだことがある。世間に発表しないですんだものだが、それには、玉子一個何銭、鶏一羽何十銭、といったようなことまで細かく書いてあった。
 戦争の記録もここまで来ないといけない。戦史にも何もないことが、あとになってどれほど役に立つかわからぬ。
 こういう記録は、百年後を目標にして、始めて生きてくると思う。
 谷口君のこの著は、細かい日々の生活が良く描かれてある。 飾りも何もないところが尊い。ヤマも何もないようなところに、何度も何度も読み返したいところがある。本人の気のつかない(だろうと思う)ところに何ともいえない味わいがある。
 支那事変が生んだ作品は幾多ある。しかし、この書の中に盛られているもの
は、その1つ1つが何の装飾もない。「ホントウの戦争」の姿である。
 この作品を世に送られるということは、谷口君が同時に2つの御奉公をなしたのである。剣とそして筆と―――、
 これこそ、永遠に残る著であって、その一時一語に血と汗とが滲み出ている。
 われわれは深く谷口君に感謝しなければならぬ。
   陸軍少尉 桜井忠温


== 読者の皆様 ==

 皆様の信頼こめた万歳に送られて祖国を発った私ではありましたが、僅かばかりの傷のため任務中途で再び銃とれぬ身となって、生きては二度と見まいと誓ったこの祖国に帰ってまいりました。皆様に申訳の言葉もなく、お詫び申上げる胸中、ただ腑甲斐無さへの自責の念で一っぱいです。この情けない私が今更戦場を語るもあまりに烏滸がましい次第とは存じましたが、私のこの微少な経験にしていささかなりとも銃後の皆様に戦場を偲ぶよすがともなれば……と存じ、私が経験しました一切を読売新聞にお話した次第であります。幸にして同社社会部の原四郎記者が、私が意図したことそのままに手記の形式にまとめるの労をとって下さいましたので、拙い言葉も実感溢るる文字にかえていただくことが出来ました。ここにこの烏滸がましき手記を世に送るに当って、護国の鬼と化した幾多戦友の英霊及び光輝ある軍旗の下に烈々として進軍をつづけつつある懐かしい戦場の戦友に深い感謝を捧げると共に、戦後の皆様の日夜にわたる支援と数々の御慰問に厚く御礼申上げておきます。一切を語り終えて今はただ銃執る身となって再起奉公の日が一日も早く来るのを待つのみです。

  昭和13年12月10日
   南京城の戦闘を思い起しつつ
        中野部隊  歩兵上等兵 谷口 勝


***** 目次 *****

◇ 瀕死の瞼に浮ぶ駅頭の旗 …………………………
◇ 朝鮮同胞の赤誠 ……………………………………
◇ 「畜生!」で一貫した気持 …………………………
◇ 捕虜を殺さぬ皇軍の情 ……………………………
◇ 保定城壁突入の大歓喜 ……………………………
◇ 体ごと叩きつけたい気持  …………………………
◇ 慰問袋の草鞋に泣く  ………………………………
◇ 杭州湾の敵前上陸 …………………………………
◇ 水壕に弾の雨 ………………………………………
◇ 崑山攻略の苦戦 ……………………………………
◇ 耳に口を寄せて代りに「万歳!」  …………………
◇ 敵弾浴びて炊く飯盒  ………………………………
◇ 繃帯痛々しきサチと邂逅  …………………………
◇ 屍の山・土見えず  …………………………………
◇ 弾雨下を這う娘 ……………………………………
◇ 耳に入らぬ弾の音 …………………………………
◇ 万歳叫ぶ火焔像   …………………………………
◇ 地軸も揺らぐ大進撃  ………………………………
◇ 女支那兵の死体   …………………………………
◇ 新戦場への門出の感慨   …………………………
◇ 敗兵に感覚なし ……………………………………
◇ 捕虜の隣りで高鼾 …………………………………
◇ 永の戦友また一人 …………………………………
◇ 星降る寒夜の夜襲 …………………………………
◇ ある夜意外な逆襲 …………………………………
◇ 路に山なす敵屍 ……………………………………
◇ 支那兵宿命の盗癖 …………………………………
◇ 血潮の飛石手い ……………………………………
◇ 敵と並んで行軍 ……………………………………
◇ 月光を浴びて大激戦 ………………………………
◇ 決死の伝令来る ……………………………………
◇ 弾も来ぬのに倒れる戦友  …………………………
◇ ああ「兄さん」の戦死  ………………………………
◇ 涙して空軍の感謝す  ………………………………
◇ 全滅を期して敵陣は  ………………………………
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※ 本書は、谷口勝著『征野千里』(昭和13年12月2日三刷 新潮社刊)を底本としている。本書では読みやすさの観点から、原書の標記を尊重しつつ、可能な限次のように標記を改めた。
(1)歴史的仮名遣いを現代仮名遣いに改める。
(2)「常用漢字表」に掲げられている漢字は、原則として新字体に改める。
(3)難読と思われる表記には、振り仮名をつける。
(4)原書の誤植は修正する。また、必要に応じて注記を加える。
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